New Model Impression 990 ADVENTUREとの7日間。by 松井 勉 第1回

バイク / MOTORCYCLE & TECHNOLOGY - 2010.09.24
990ADVENTUREにパニアケースを取り付けたスタイルは、その名の通り、冒険旅行を連想させる頼もしさとスタイリッシュさが共存する。

990ADVENTUREにパニアケースを取り付けたスタイルは、その名の通り、冒険旅行を連想させる頼もしさとスタイリッシュさが共存する。

いつ見ても個性的。


シート前端から左右に給油口がある燃料タンク。その肩口を絞ったスタイルは、正面から見るとフェアリングの腰のくびれへと繋がっている。

シート前端から左右に給油口がある燃料タンク。その肩口を絞ったスタイルは、正面から見るとフェアリングの腰のくびれへと繋がっている。




こうしてみるとライダーの座る位置が低く設定されていることが解る。ハンドルグリップは適度な幅でUターンなどでももて余さないサイズ。

こうしてみるとライダーの座る位置が低く設定されていることが解る。ハンドルグリップは適度な幅でUターンなどでももて余さないサイズ。




身長183センチ、体重83キロの僕が跨るとこれぐらいの足つき性。860ミリと、シート高そのものは低くはないが、スリムな車体に助けられ足つき性は悪くない。

身長183センチ、体重83キロの僕が跨るとこれぐらいの足つき性。860ミリと、シート高そのものは低くはないが、スリムな車体に助けられ足つき性は悪くない。



 

段付きになったシートは広い面積でサポートしてくれるため、ロングランでも快適な乗り心地をシートは確保してくれた。

段付きになったシートは広い面積でサポートしてくれるため、ロングランでも快適な乗り心地をシートは確保してくれた。

 

 

 

キーとオーナーズマニュアル。その二つを受け取り白の990ADVENTUREとの1週間は始まった。ガレージに停まっている990ADVENTURE には純正アクセサリー、POWER PARTSのカタログにあるアルミ製パニアケースが左右に装着されていた。正面から見ると細身で背の高い印象の990ADVENTUREだが、四角いケースが左右に付くことで、上下左右のバランスが変わって見えて新鮮だった。
見慣れたハズなのにそのスタイルはいつ見ても新鮮。ヘッドライトから続く黒いウインドスクリーンがそのままフェイスを造る特徴的なデザイン。左右2分割という特徴的な燃料タンクは19.5リットルという容量を持ちながらあくまでもスリム。フロント21インチ、リア18インチというホイールサイズからくる オフロードバイクらしい逞しさ。直線的なデザインながら、各部には印象的なディテールが多く間近で見るとデザイナーがどれほど力を注ぎ込んだかが解るというもの。まさにその存在感は唯一無二のアドベンチャーツアラーなのである。
「パニアケース、パニアケース、パニアケース」と3回唱えて、両手を後ろに回しパニアケースの横幅を確認してから走り出す。10年以上前、パニアケース付きのバイクで帰宅し、うっかりそれを忘れてガレージの壁にしこたま擦りつけるツライ経験をしてからの習わしです……。
走り出すと軽快なエンジンが大柄に思えたこのバイクに一体感を与えてくれる。エンジンの印象は歴代LC8エンジン搭載のADVENTUREと同様の キャラクターであり、990SUPER DUKE、990SM-R、990SM-Tに搭載されるLC8エンジンの良さと共通している。990ADVENTUREに搭載されるそのエンジンは、09年のモデルチェンジで出力をそれまでの98馬力から106馬力へと引き上げている。時として排気量そのままでパワーアップすると、性格が高回転型になったの? と思われるが心配ご無用。エンジンは日本の市街地で多用する3000rpm程度まででも充分なパワーデリバリーをしてくれる素直で扱いやすい性格 だ。クラッチの操作性、シフトアップ、シフトダウン時のミッションのタッチ、そしてアクセルに対するエンジンの反応を含め、角が上手く丸められている。 KTMが長年培ってきたエンデューロ、モトクロスというオフロードジャンルでの、路面を効率的に捉えてバイクを前進させるトラクション特性の上手さはこの バイクにもしっかりと息づいている。
初日、バイクを預かりただ自宅に戻るだけだったが、乗り心地の良さにも心を溶かされた。首都高環状線にある路面の継ぎ目や路面を横切るギャップを見事に吸収していく。どんな感じかといえば、通過の瞬間、かすかにハンドルにコンとくるが、シートを通したお尻にはほとんど感じない、という不思議な印象だ。そ れでいてタイヤが路面に着いているいわゆる接地感はとても充実していて、カーブや減速時にも不安なくコントロールできる。ダンパーがしっかり効いていて、跨っただけでズンとリアだけが沈む、という印象もないかわりに、しっかりと路面に追従するサスペンションの動きの良さは快適。WPサスペンションの底時からは、スポーツライディングよりむしろ日常にあり、なんて原稿の書き出しを頭にメモりながら走る。まさに「あ、良い感じ」の源泉だ。
暗くなった首都高で赤系の照明が照らすメーター類はシンプルで見やすい。速度計の下に並ぶトリップや時計など文字の大きさがあと少し拡大されるともっと 嬉しい、と思うのは自分の視力が低下したせい? そんな自問を見透かすようになにやらオレンジのランプが点灯。「視力注意」の警告灯か?と思ったら燃料残量警告灯だった。残量4リットルのリザーブ容量というのは確認ずみだったので、自宅近所に戻ってセルフのガソリンスタンドへ。
左右に分かれた燃料タンクそれぞれにある燃料キャップ。これも意外とそそられるディテールだ。超個人的な話で恐縮ですが、かつて自分自身が海外のラリーに参加する時のことだ。“重たい燃料の大切な入れ物を、いかに効率良くしかもラフロードから来る振動衝撃やオフロードライディングで加わる縦横からのモーメントの中で、長距離、長時間のライディングから守るのか”というバイク造りの基本を経験者にアドバイスを求めたことがある。
すると、タンクを造る素材、成型方法、溶接方法、マウントする方法、衝撃緩和の手法、応力の分散させるテクニックなど解りやすく御教授いただいた。まず タンクは一体型より分割型が好ましいと聞いた。転倒でタンクに穴が開く、燃料漏れのトラブル時、一体式より分割式のほうがリスクを低く抑えられる、という意味でも分割式タンクにすべし、は的を射ていた。
この先を書き出すと「タンクフェチかよ!」と叱られるのでこの辺にしておきますが、とにかく分割タンクなんて一件バイクを組み立てるのにも工程数が掛かるし、タンックキャップも二つ要る。いわゆる工業製品としてコスト管理目線で考えたら真っ先にノーを突きつけられそうなのに、このデザインのおかげで990ADVENTUREは低い位置に燃料を搭載でき、かつスリムなライディング環境を生み、ラフロードに入ってもシッティングでもスタンディングでもライダーとボディーコンタクトが実にスムーズ。
この辺の良さがライダーの気分を盛り上げ、レースなどでも走り続けたくさせる部分なのだ。なんて、ガソリンスタンドで何処まで盛り上がるんでしょう、ワタシ。
この990ADVENTUREの出自がダカールラリーを走った950RALLYEだったことを考えれば、KTMが培ってきたラリーのDNAを感じて嬉しくなるのである。なんて思わず力んでしまいます。マニアックですいません。いい加減にします。

ピュアなパフォーマンスだけじゃない、旅トリムの着こなしにも驚く。

それにしても給油中、アルミ製のパニアケースを付けたアドベンチャーは注目を集めた。その目は曰く「何処まで行くんだろ」やら「背の高いバイクね」といったもの。思わず、そのアルミの箱の中はカラッポだし、ここから1分で自宅帰還です、という空気が漏れないよう、旅人モードを出してみる自分です。
さてさて、ガソリン入れるだけでこれだけ盛り上がれる(まさに当社比とうやつでが) 990ADVENTURE。この一週間、一体どこまで盛り上がるのか、自分でも想像が付きません。ということで、600キロ+αを走った30キロ目までで 速くも今回のリポートは終了です。ちょっと脂っこい話しだったことを反省して、次回はローファットな流れで一気に報告をしたいと思います。
 

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